医療法人 熊愛会熊本脳神経外科病院

診療の特徴と実績

対象となる主な疾患

当院には、新患・再来合わせて年間約18,000人の患者さまが来院されます。その多くは頭痛や頭部打撲やめまいといった症状を主訴とされています。一方で脳卒中や慢性硬膜下血腫のように迅速な治療を必要とする疾患や、脳動脈瘤や認知症といった時間をかけて経過を慎重に観察していくべき疾患も含まれます。ここでは、受診される原因として特に多い頭痛・頭部打撲・めまい・脳卒中についてご案内します。

症状内訳

頭痛

当院を受診する患者さまに一番多い症状は頭痛です。片頭痛、緊張型頭痛、神経痛、のように頭痛にもいくつも種類・原因がありますが、以下の症状がある際には病院受診をお勧めします。

  • 今までにない強い痛み
  • 発熱を伴う
  • 突然の激しい痛み
  • 手足の痺れを伴う
  • 痛みが徐々に強くなる
  • 意識が朦朧とする

頭部打撲

転倒や接触に伴う頭部打撲も、来院理由として多い症状です。特にお子様の場合、容体が心配になることは多いかと思います。以下の症状がある際には病院受診をお勧めします。

  • 時間とともに痛みが強くなる
  • 手足の痺れや動かしにくさを感じる
  • 嘔吐、吐き気がおさまらない
  • 痙攣が起こる
  • 物が見にくく感じる
  • 反応が鈍る、いつもと様子が違う
  • 耳・鼻から血液や体液が出てくる

※受傷から1~2か月後に慢性硬膜下血腫という血のかたまりを形成する場合があります。特に高齢者に多く、物忘れ・頭痛・歩行障害・尿失禁などの症状が後に出現した場合は病院を受診してください。

めまい

めまいには大きく分けて「耳」に原因がある場合と「脳」に原因がある場合があります。
耳鳴りや耳閉感を伴うときは、耳に原因がある可能性が高いです。まずは耳鼻科を受診してください。一方、脳卒中や、脳へ循環する血流の異常に伴いめまいが生じることがあります。以下の症状がある際には脳神経外科や神経内科の受診をお勧めします。

  • 脳卒中を疑う症状を伴うとき
  • 急に上を向いたり振り返ったりしたときに起こる
  • ふるえや痙攣を伴う(てんかん)

脳卒中(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血)

脳卒中の治療は、発症後なるべく早く取り掛かることが重要であり、それにより、症状の悪化を防いだり、回復を早めることが期待できます。以下の症状が現れた場合は、一時的な症状であっても、早めに病院を受診してください。

  • 突然同じ側の手足に力が入りにくくなった
  • 物が二重に見える
  • 突然ろれつが回らなくなった
  • 意識がもうろうとする、意識がなくなる
  • 言葉が出なくなった
  • バランスが取れずうまく歩けない
  • 急に片方の目が見えにくくなった
  • 突然ハンマーで殴られたような頭痛がする

その他

慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症、脳動脈瘤、脳動脈解離、脳腫瘍、てんかん、認知症など、脳神経外科領域の疾患を主な対象として診療を行っております。

どういった検査ができるか

慎重な診察・問診に加え、MRI・CT・エコー検査などの画像診断や、採血・心電図・脳波・血圧脈波検査などの生理検査を駆使し、正確な診断を行うことで、適切な治療に結びつくよう取り組んでいます。

  • MRI検査

    脳・神経・血管のような軟部組織の性状把握を得意とし、造影剤を使わずとも血管の描出ができる点がメリットです。脳梗塞や脳動脈瘤の早期発見の為には欠かせない検査です。

    頭部MRI画像
  • CT検査

    出血や骨の描出を得意とし、短時間で検査が行える為、迅速な診断に役立ちます。急性期の脳卒中や、事故や転倒などによる外傷に対して有効な検査です。

    頭蓋骨3D画像
  • エコー検査

    超音波を用いてリアルタイムに体内の様子を確認できます。頸部血管検査では、血管壁の厚さやつまりを視覚的に評価し、脳卒中の原因になる”動脈硬化”や”プラーク”の有無を調べます。

    エコー画像
  • 脈波検査(CAVI・ABI)

    手足の血圧と脈波を測定することで、全身の動脈の固さ(CAVI)と動脈のつまり(ABI)の程度を数値化して評価します。加えて、血管年齢を算出することで、健康増進への意識付けを行っています。脈波検査

  • 脳波検査

    脳の活動によって流れる微弱な電流の変動を波形として捉えることで、てんかんや意識障害などの疾患に代表される脳の活動異常の有無を調べる検査です。

    脳波波形

どういった治療ができるか

軽微な処置や点滴、薬の処方にて多くの疾患は軽快しますが、重症の場合には、入院してより集中的な治療を行います。中には、手術を必要とする疾患もあります。ここでは、当院で行っている手術や、専門的な治療についてご紹介します。

手術の内訳

慢性硬膜下血腫除去術

慢性硬膜下血腫とは、脳と脳を覆っている硬膜の間に血腫が貯まる疾患です(図1)。50代以上の男性に多く、頭部外傷などをきっかけに発症し、受傷後数週間から1~2か月かけて大きくなった血腫が次第に脳を圧迫することで、頭痛・吐き気・片麻痺・痺れ・失語(うまく話せない)などの多彩な症状が起こります。高齢者の場合は認知機能障害・失禁を伴うこともあります。診断にはCTやMRIといった画像診断が必須です。

慢性硬膜下血腫除去術

症状が少なく血腫も小さい場合、服薬のみで治癒することもありますが、症状の強い場合には、入院し手術を行います。当院では、頭蓋骨に直径数センチの穴を開け血腫の除去、洗浄を行う穿頭血腫除去術を行っています(図2)。術後は再出血などに注意しながら経過を観察し、入院からおよそ2週間かけて退院となります。

※頭部外傷があったか分からない例も存在します。(お酒を飲んでいた、認知機能に問題がある、など)また、大酒飲みの方、血液さらさらの薬を飲んでいる、脳に萎縮がある(脳と頭蓋骨の間の隙間が広い)、透析中、といった特徴は、慢性硬膜下血腫を発症しやすい因子と考えられています。心当たりの方はなお一層ご注意ください。

正常圧水頭症に対するシャント術

脳と脊髄の表面には脳脊髄液という無色透明の液体が循環しています。その循環が悪くなり、脳脊髄液が脳室という部屋に溜まってしまうと、脳室が脳を圧迫したり、血流が悪くなってしまうために、歩行障害(ちょこちょことした小刻み歩行)・尿失禁・記憶障害、などの症状(図3)が生じます。こう言った症状を水頭症と言い、特に、脳脊髄液の循環を悪くする原因となる病気が特定できず、脳圧も高くない場合のものを、特発性正常圧水頭症(iNPH)と言います。

正常圧水頭症に対するシャント術

iNPHは髄液の流れを良くする手術によって改善しうる病気です。手術には、脳室ー腹腔シャント・脳室ー心房シャント・腰椎ー腹腔シャント、の3つの方法がありますが、当院ではそのうち腰椎ー腹腔シャント(L-Pシャント)を行っております。腰とお腹を小切開し、腰からお腹(腹腔)にむけて脳脊髄液を排出させる管を体内に埋め込む手術(図4)です。当院では年間20~25件の手術を行っています。手術後はリハビリを行い、入院からおよそ3週間かけて退院となります。

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ボトックス治療

脳卒中の後遺症に痙縮というものがあります。筋肉が過度に緊張することで、手指が開きにくくなったり、肘が曲がったままになってしまう症状(図5)です。そのため、服の脱ぎ着といった日常動作や、歩行に支障が生じます。

ボトックス治療

当院で行っているボトックス治療は、ボツリヌス菌によって作られるタンパク質(ボツリヌストキシン)を有効成分とする薬を注射し、筋肉を緊張させている神経の緊張をほぐす治療です。注射によって、日常動作やリハビリがしやすくなり、関節が硬くなってしまうこと(拘縮)を予防でき、痙縮による痛みを緩和します。ただし、注射と合わせてリハビリを行わなければ機能の回復は望めず、効果が続く期間も限られます。効果には個人差があり、また、薬品も高額ですので、主治医とよく相談を行った上で取り組む必要があります。

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